第5回フードバンクTAMAシンポジウム

フードバンクTAMA第5回シンポジウムを開催しました!

第5回目のシンポジウムをイオン多摩平の森イオンホールにて開催いたしました。約70名の方にご参加いただきました。日野市社会福祉協議会常務の佐野栄一様によるご挨拶、朝日新聞社文化くらし報道部記者・山内深紗子様による基調講演、更に立川市ひとり親家庭福祉会立川みらい会長・篠原輝美様による報告、その後の質疑応答といった内容で、とても充実した時間を過ごすことができました。お二方とも体験を元にしたお話しでしたので、うなづかれたり、涙をながしたり、メモを熱心にとられる参加者のお姿がありました。アンケートを取らさせていただきましたが、賛同する声が多数をしめました。

<内容>

司会挨拶 早川洋子(フードバンクTAMA理事)
■挨拶 
・芝田晴一朗(フードバンクTAMA事務局長) 
・佐野栄一 氏(日野市社会福祉協議会常務)   
■基調講演 
・山内深紗子 氏(朝日新聞社文化くらし報道部記者)
■報告
・篠原輝美 氏(立川市ひとり親家庭福祉会立川みらい会長)
■質疑応答
■閉会の辞 神山治之(フードバンクTAMA理事長)

<挨拶・講演・報告の要旨>

①司会挨拶:早川洋子(フードバンクTAMA理事)

②挨拶:芝田晴一朗(フードバンクTAMA事務局長)

 皆さんこんにちは。フードバンクTAMAのシンポジウムにおいで下さり本当にありがとうございます。また、沢山の食品を受付にお持ちいただき心より感謝申し上げます。

 本日のご来賓、講師の諸先生のご紹介をさせて頂きます。

始めに日野市社会福祉協議会の佐野常務様。
 平成29年1月に私たちフードバンクTAMAと日野市社会福祉協議会は連携協定を締結致しました。日野市社会福祉協議会様には、設立時より全面的にバックアップして頂いております。本日も多数の職員の皆様に来ていただいております。また、多摩市社会福祉協議会の方々にも来て頂いております。いつもいつも本当にありがとうございます。

 次に朝日新聞社の山内記者様です。
 常に弱者の側に立った記事を書かれております。困難と闘っている人に寄り添う素晴らしい記事に本当に感動しています。子どもの貧困問題、がんと闘っている方や障害者の方々への思いの溢れた記事に深い感動を覚えています。今日も素晴らしいお話をよろしくお願いいたします。

 次に立川みらいの篠原代表様です。
 私たちフードバンクTAMAの設立時より少しずつ応援をさせて頂いております。同時に感動もいっぱい頂いております。ひとり親家庭のお母さん方は非正規で働いていらっしゃる方が多い中、一生懸命子育てをされておられます。ご自分は食べなくても、一食抜いても子ども達に少しでも、と頑張って毎日を生きていらっしゃいます。そのようなご家庭に食品をお届けすると、お子さんが笑顔でフードバンクさんだ、と言って飛び出してきてくれます。今日は、このシンポジウムで少しでもひとり親家庭のご苦労の実情を知って頂ければと思います。

 フードバンクTAMAは、これからも共生共助のネットワーク、共生共助の支え合いの地域づくりに努力して参ります。そのためには、皆様方のご理解とご支援が何よりも必要です。今後ともボランティアでの支援、食品での支援、運営資金、ご寄付での支援を何卒よろしくお願い申し上げ、開会のご挨拶とさせて頂きます。

③挨拶:佐野栄一氏(日野市社会福祉協議会常務)

 本日は、シンポジウム開催おめでとうございます。

 日野市社会福祉協議会は、フードバンクTAMA様が2016年9月に創立された翌年の4月に、本社会福祉協議会と協定を結ばせていただきました。協定のテーマは「貧困家庭にある子供たちの支援を行う」というもので、これまで、フードバンクTAMA様と歩調を合わせて、支援活動を継続してまいりました。

 例えば、農協JA東京みなみの野菜と果物を引き取りに伺い、倉庫に保管し、必要とされる家庭や福祉施設へ届ける等、お互いに協力してまいりました。私共の支援が、最終的には、それぞれのお子さんたちの大きな喜びに繋がっていることも踏まえ、フードバンクTAMA様には、今後とも、ますますのご活躍を祈念しております。

④基調講演: 山内深紗子氏(朝日新聞社文化くらし報道部記者)[PDF]

 私は、2006年の「ネットカフェ難民」の取材に始まり、これまで居場所の無い若者や子供達の取材をしてきました。貧困に陥った若者は、何より孤独がつらいと訴えました。非正規雇用の問題も深刻になった時期です。全て自己責任という言葉で済ませて良いものなのか?と世の中に記事で問いました。

 その後同じような若者に出会い、話を伺わせて頂きましたが、子ども期に信頼できる大人に出会えず愛着障害を抱えていたり、「経験の喪失」による生きずらさを抱えていました。取材を続けるうちに、子ども期での早期介入が大事だと思うようになりました。日本で子どもの貧困率が最低だった時は、6人に1人でした。貧困にはふたつの種類があります。最低限度の生活も営めない「絶対的貧困」。平均的な生活水準以下の「相対的貧困」。後者への対策や支援が必要だというのが、世界的な潮流です。

 日本もそのことに気づき、支援が始まっています。相対的貧困は、なじみがない人には分かりにくいです。例えば、朝日新聞が2016年から2年間キャンペーンを打った「子どもと貧困」。ここで、ネットを通じて読者にアンケート調査をしました。

 「希望する全ての子供達に与えられるべきと思うもの」のリストを挙げ、必要だと思うものを聞いたのです。例えば、「1日1回の肉や魚」「絵本」「自転車」「中高の塾代」など。この、数字が、すべての項目で上がっていく社会的なコンセンサスを形成していくことが、貧困対策には重要なのです。決して贅沢なものでは無く、子供の体験機会を与えるためには必要不可欠なものです。そして、かわいそうだから支援するというのではなく、すべての子どもはこれらを与えられる権利を持っているのです。

 また、倫理や、権利の観点から訴えるだけではなく、統計で社会を動かすことも重要です。貧困の放置は、将来の納税者を失います。貧困なんて、関係ない。ではないのです。これは、社会的な損失です。また、別の研究では、小学校入学前から子供達への支援を行う「早期介入」の必要性が示されています。

 様々な視点での検証、政策の変換が求められていますが、ここ最近の子ども食堂や、フードバンクなどの草の根の支援の盛り上がりは、歓迎すべきことです。ですが、これを一ブームに終わらせてはいけない。これからの10年が勝負どころでしょう。

 最後に、支援に関わる方もお越しくださっています。貧困問題はすぐに解決できるようなものではありません。息長く根気強く向き合わなくてはならない課題です。私も、取材中、闇にのまれそうな気持ちになることも多くあります。光がみえない時に、絶望しそうにもなります。そんな時、母子生活支援施設の「柏ビレッジ」の元施設長のお話を思い出しています。

 「子どもたちの重要な他者になる」。「彼ら彼女、親も含めての行動の奥の声に耳を傾ける」。「深刻な時ほど、敢えて深刻ぶらないでいこうと言い聞かせる」。みなさんもどうか、思い悩まれましたら、思い出してください。

⑤報告:篠原輝美 氏(立川市ひとり親家庭福祉会立川みらい会長)[PDF]

 山内様の基調講演内容と重なる点が多いようにも思いますので、急遽、私自身がひとり親でもありますことから、その体験してきたことをお話し致します。

 私は子供が小学1年になるまで、夫からは酷いDVを受けて来ましたが、そんな親を見てきた子供から家を出ることを促され、夫から逃げシェルターに着の身着のまま保護されることになりました。シェルターを出たあとは見も知らぬ土地で頼る人も無く、物凄く困窮した生活を続ける内に、精神を患い、骨の病気にもなり、それでも介護の資格を取り、子供と支えあいながら生活して参りました。

 そのような経験から、私のような苦しみや悲しみを味わってもらいたくないという気持ちから「立川市ひとり親家庭福祉会」「立川みらい」の会長を引継ぎ、活動を続けて来ました。過去の会員の中には、学校給食以外には3日間食事をしていない子供がいる家庭もありました。

 その親は、助けを求める方法を知らないのです。親自身が「常識が無い」と非難されても、愛されたことが無い人は、自分の子供の愛しかたもぎこちないものになってしまうのです。いろんな状況・立場のひとり親同士が交流し、助け合っていく一つの場の提供として「おしゃべりカフェ」も開催しています。

 フードバンクTAMA様には、昨年度まで、30世帯の家庭に毎月ごと、更には夏休みや冬休みに食材配布をして頂き、子供達も「宝箱が来た!」と喜ばれ、親と子供がコミュニケーションを図る良い機会も提供してもらっています。この食材配布により、頼る人のいない親にとっては「自分たちを気遣ってくれる人がいる」と感じられる事、心から「嬉しい」と思える機会をいただいている事で、また頑張ろうという気持ちになるようです。本当に有難うございます。

質疑応答

Q1:(山内さんへ)貧困の背景で「戸籍制度」について触れられたかと思いますが、補足説明して頂ければ幸いです。
A1(山内氏)日本の貧困の大きな特徴は、ひとり親が貧困世帯である率が大きいこと。つまり、社会保障が、夫婦と子どもという標準家族を想定して設計されているため、そこを外れると、経済的にも、社会的にも苦境に陥りやすい。養育費の支払い義務がないことも大きな問題です。女性が主婦として家族を支え、男の人は外で働く。高度経済成長期には都合の良かったモデルでしたし、家制度の継承の意味でも、多くの人々はそのあり方を選択してきました。ですが今、離婚も増え、単身世帯も増えている今の時代、家族単位ではなく、個人単位の社会保障制度に変えていく必要があると思います。ジェンダーの問題も根っこにあると感じます。どうパートナーと向き合うのか。離婚、家庭内暴力、望まぬ妊娠、虐待・・・様々な要因がからまり、貧困状態になっていくのです。貧困は、差別にもさらされます。そうした社会にあって、子どもたちが、一番厳しい状況に置かれています。

Q2:(篠原さんへ)ひとり親の方には、話の出来る大人が「民生委員」だけであったということでしたが、私も民生委員なのですが、ひとり親家庭の親御さんへ、遠慮して声掛けをしていなかったのですが、もっと積極的に関わったほうが良いのでしょうか?
A2(篠原氏)その親御さんご自身の考えにもよるのですが、私自身は声掛けをしてもらうと嬉しかったです。もし、声掛けをして、避けられているようなら止める等の対応で宜しいのではないでしょうか。

Q3:貧困について勉強をしているのですが、例えば、フードバンクの支援を有難く受けているとそれがずっと、いつまでも頼り続けてしまうのではないか、なかなか変わらないなという不安があります。また生活保護受給者の不正や母子手当てなどの不正への批判、貧困なのにスマホを持っている高校生の報道などもありました。どのように考えたら良いでしょうか?
A3:(篠原氏)クラスの子供達のなかで、半分以上がスマホを使っているとしたら、スマホは贅沢品では無くて、子供に必要なものだと考える必要があります。また、生活保護者がパチンコに行くのが常識外れと非難されるとも聞きますが、その人が何か心を満たすものがあれば、パチンコには行かないでしょう。その当事者の裏には何があるのかを見ないで、非難をするのは誰にでも出来ることだと思います。
A3:(山内氏)ひとつはこれまでお話してきた貧困とはどんな状態なのかについての理解がまだ社会に広がっていないことがります。スマホの高校生の報道に対するバッシング。今の時代、スマホは命綱。貧困世帯が最後まで保持するものです。想像力を働かせれば分かることかなと。そして、相対的貧困が理解されていないので、「それはぜいたく」と決めつけてしまう。 そして、不安については、支援とは何かを考える必要があります。心に届くように接しているだろうか? 信頼関係のある支援なのかと。指導では届きません。米国などでは、課題を洗い出し、診断名をつけ、支援を施すという姿勢ではなく、当事者や家族の強みを生かし、彼らが自己決定し、意志を持って自立に迎える支援にする支援に切り替わろうとしています。無責任な意見に惑わされることなく、こうした視点に立ち。地道に息長く続けることが大切だと私は思います。

⑥閉会の辞:神山治之(フードバンクTAMA理事長)

 お忙しいなか、5回目のシンポジウムへ多数の方々にご参加いただき、まことに有難うございました。佐野様、山内様、篠原様、ひとり親家庭の貧困の現場のお話と情報提供、有難うございました。令和に入ってからも、困っている人々は増えていきます、そのような方々へ、微力ではありますが、4年目のフードバンクTAMAの活動を継続してまいりたく思います。本日、皆様より提供して頂いた食品も、各家庭や各団体に配布し、最終的にはそれぞれの家庭の子ども達の笑顔でお返しを貰っております。今後とも、皆様の賛同と支援、更には活動への参加も頂ければ幸いです。

<アンケート結果> 参加者70名中、回答数38名

Q1 「本日のシンポジウム開催を何で知りましたか?」
A1 「広報・ポスター・ちらし」が62%、「家族・知人・友人」34% でした。
Q2「シンポジウムの参加回数は?」 
A2「初めて参加した」が78%
Q3「総合的にどのくらい満足されましたか?」
A3 「満足」95%、「ある程度満足」3%
Q4 「子どもの貧困問題について関心が高まりましたか?」
A4 「高まった」93%、「ある程度高まった」5%

<寄せられたご感想>

△ 貴重なお話しをして頂きありがとうございました。今回私が感じたことは、お二方もおっしゃっていたように「経験の大切さ」を強く思いました。私は将来、子ども関係の仕事につきたいと思っています。(葛飾区在住 大学生)
△ 貧困というのは選択肢がない、体験機会の喪失、であることが自分にとっての新たな学びでした。身体的、経済的な問題だけではないとわかりました。また、フードバンクから提供される食料は、その家族や子どもの経済的支えになるだけではなく、ひとり親家庭であれば親と子、児童養護施設であれば、入所している子ども同士をつなぐアイテム、資源になると感じました。(多摩市在住 大学生)
△ 住んでいるところで、子供たちの力になれたらと心より思いました。知っているつもりで知らなかったことを今日お聴きして本当に良かったです。畑をやっていて、これから野菜が採れますので、是非使っていただければと思いました。少しですけど・・・(日野市在住 主婦)
△ 子どもの貧困は、家庭から支援していかないと、DVやネグレクト問題に発展していく。学校で子どもたちをみていて、”この子は”、”この家庭は”と感じることが多々あります。孤立化をしないよう、近所、自治会も含めて支援の目を! 
公助として、負の連鎖から脱せられるような施策が必要。(立川市在住 教職員)
△ 戸籍制度、ジェンダー、支援の仕方の現在、対等性のこと、家族の機能の問題など、こちらの考え方、在り方に直接関係することが再確認できて良かった。子どもにとって時間は待ってくれないので、直接的なことをすることも大事、との思いを強くしました。(多摩市在住 主婦)
△ お二人のお話しが大変良かったです。特に山内さんは、講演では、もう少し具体的な話が聴きたかった、と少し物足りない思いでしたが、質問にお答えいただく中で、より詳しく想いをお聴きできて良かったです。(八王子市在住 団体職員)
△ 質疑応答を通して、”支援する”ということについて、あらためて考えさせられました。当事者の声、取材による実態把握と客観的視点。お二方のお話を伺えて本当に参考になりました。(日野市在住 公務員)
△ 社会福祉協議会のボランティア登録をしており、今回、貴団体の存在を知ることができました。特に子どもに対し、「食」という最も大切な面を支えていらっしゃるのは、とても大切なことだと感じております。機会があれば、また参加させていただきます。(日野市在住 会社員)
△ 現在、やっと目をむけられだした子どもの貧困のタイトルに相応しい内容のお話しでした。あらためて「支援」について考える良い内容でした。(武蔵村山市在住 男女共同参画センター勤務)
△ 篠原さんの言葉は1つ1つ実体験に基づいているので、心に響きました。女性が働きやすい、子育てがしやすい、社会構造になるのには、まだまだ時間がかかります。それまで、立川みらいさんやフードバンクTAMAさんのような民間の頑張りに頼るのが現状です。その温かさが子どもたちに伝わっていることがわかりました。大変な活動ですが、頑張ってください。
△ 子どもの貧困、DV、虐待、ひきこもり・・・。地域の中に見えていない課題が数多くあって、根本的な解決がどれ程難しいことかと実感しました。その中でフードバンクTAMAさんのような活動は、今後ますます大切になると思います。これからもがんばってください。「支援には信頼関係が必要」という話、その通りと思いました。(八王子市在住 団体職員)
△ 「子どもの貧困」のご講演、質疑応答を通じて、物事を多角的に見る事の大切さを学ばせて頂きました。貴重な講演をありがとうございました。(調布市在住 会社員)
△ 家族機能の低下、「子どもの貧困」は、その現象の一断面に過ぎない、古い家族観を振りかざし、家長制の復活を叫ぶ人もいるが、そんなことをしたらますますこじらせる。個の孤立の問題を含め、家族まることの支援の仕組みを更に充実させることが急務。(23区在住)
△ 都合で1時間ほど遅れて参加しましたが、最初から聴きたかったかなと思えるお話しでした。実際に経験された方のお話しは身につまされる思いでした。(日野市在住)
△ 機会がありましたら、ぜひ又食品の援助をさせて頂きたいと思います。孫たちには折りにふれ、自分たちの置かれている状況の幸せを話して聞かせています。少しでも多くの方が関心を持ってくれることを願っております。(日野市在住)

フードドライブにご協力をいただき、大変ありがとうございました。有効に活用させていただきます。

 

2019/05/24