フードバンクTAMA第6回シンポジウムを開催しました!
第6回目のシンポジウムを2022年11月26日に日野市中央福祉センターにて開催いたしました。約70名の方が会場参加・オンライン参加として40名の方に参加いただきました。日野市社会福祉協議会会長の奥住日出男様によるご挨拶、フードバンクTAMA理事長・神山治之による報告、東京大学教授・湯浅誠様による基調講演があり、その後の質疑応答といった内容で、とても充実した時間を過ごすことができました。アンケートを取らさせていただきましたが、賛同する声が多数をしめました。
<内容>
司会挨拶 石渡ひかる(フードバンクTAMA理事)
■あいさつ
・奥住日出男 氏(日野市社会福祉協議会会長)
■報告
・神山治之氏(フードバンクTAMA理事長)
■基調講演
・湯浅誠 氏(東京大学教授)
■質疑応答
<挨拶・講演・報告の要旨>
①司会挨拶:石渡ひかる(フードバンクTAMA理事)
②挨拶:奥住日出男 氏(日野市社会福祉協議会会長)
第6回シンポジウム開催おめでとうございます。日野市社会福祉協議会は、フードバンクTAMA様と2017年1月に「生活困窮者の支援を行う」という連携協定を結ばれていただきました。そして、同年4月に第1回シンポジウムが開催されました。この時のテーマが「共に考える“子供の貧困”」でした。あれから6年間、フードバンクTAMA様と歩調を合わせて、様々な支援活動を継続してまいりました。また、生活困窮者に食品を配布するフードパントリーでは、フードバンクTAMA様に大変力添えをしていただきました。
第1回のシンポジウムから6回目のシンポジウムになりますけれども、「子供の貧困」は、まだ解決しておりません。今回のシンポジウムが実のある成果が上げられることを願っています。
③報告:神山治之(フードバンクTAMA理事長)
まず2020年度から2022年度の間の活動報告をさせていただきます。ご存じの通り、コロナウイルス感染症拡大の影響が2020年より出てきました。集まる事が許されず、子ども食堂は閉鎖され、集めた食品・食材は施設やひとり親世帯支援団体等を通して困窮家庭に配布は続けてきました。先ず特色ある活動ですが、以下のような点が挙げられます。
・日野市内での生活困窮者に対するフードパントリー
・八王子市内で子ども食堂24団体への食料支援
・日野・立川市のひとり親家庭への支援
・八王子市の子育て世帯食品提供事業
・夏休み子ども応援プロジェクト
受贈・寄贈のデータは、2019年=受贈28トン・寄贈27トン、2020年=受贈58トン・寄贈61トン、2021年=受贈120トン・寄贈112トンとなっています。なお、2022年前半は既に前年を超す勢いです。2019年度までは子ども食堂・児童福祉施設など「子ども」への食支援に重点をおいてきましたが、2020年度からは新型コロナウイルス蔓延に伴い、児童福祉施設・ひとり親家庭支援団体等からの強い要望に応え、フードパントリー事業など個別食支援に軸足を移しました。日野市内でのパントリー活動は、2020年秋頃には月100箱以上、2021年の多い月には200箱程を配付する様になりました。現在の協賛企業・団体は約60社ほど、味の素AGF㈱様、カルビー㈱様、マルコメ㈱様、㈱ローソン様などから毎月多くの食品をいただいております。企業様側のメリットとして、廃棄コストやCO2削減、フードバンクへの食品提供等の費用は全額損金として扱えて税制改正、また、SDGs持続可能な開発目標の具体的取組もあり更に協賛企業が増えてきました。子どもの貧困を巡っては、貧困の連鎖が指摘されており、そのサイクルは、次のようになります。⇒親の収入が少ない⇒十分な教育が受けられない⇒進学・就職で不利に⇒低収入の仕事に従事⇒子ども世代も貧困になる⇒親の収入が少ない この貧困の連鎖を断ち切る為には「他者からの支援」が必要となります。地域に根差す活動をする事で、子ども達が成長し地元で働く様になれば街は活性化するはずです。少子高齢化で時代を担う子ども達が夢も希望も持てない地域社会では先が見えてしまいます。地域・地元に奉仕する事で、財産である子ども達が輝ける街づくりを目指す活動を一斉に出来れば貧困の連鎖にも一石投じる事が出来ると思います。最後になりますが 無償提供のフードバンク活動は、皆様からの会費・寄付金・補助金等で運営されております。それらのお金は、食品の運搬や保管、事務所の光熱費などに使われます。商品購入も多少あります。皆様の温かいご支援を何卒宜しくお願い致します。
④基調講演: 湯浅誠氏(東京大学教授・むすびえ理事長) ※テーマ「子ども食堂と私たちの地域・社会」
子ども食堂が広がっている背景、そういう場所があると何が起こるのか?皆さんがそういうことに関わっていこうという気持ちになる、そうした点について話をしていきたいと思います。
子ども食堂の多くは市民の方が自発的に行っていますが、全体の5パーセントぐらいが自治会が行っていて、そうした傾向がさらに広がってきています。子ども食堂とは、どういった場所でしょうか? 子ども食堂3つあ2つは高齢者が来ています。子供だけではなく、高齢者の方も当たり前に来る場所というのが多くの子ども食堂の共通点です。
数字で見ていきますと、高齢者も参加しているところが62.7%、子どもだけというのが4%、困窮者だけというのが5%、参加に条件がないというのが78.4%となっています。従って、多くのフードバンクが支援している団体さんとやや違うのが、ここです。多くのフードバンクが支援している母子生活支援施設とか児童養護施設とかは課題のあるご家庭が集まっていますが、子ども食堂の8割は、どなたでもどうぞとなっており、実際にいろんな方が来ています。中にはお金持ちもいるでしょう。それでいいよ。ということでやっています。従ってそこにいる人は必ずしも生活困窮者ではないということです。
何でこういう場所を作るのか、民間の方々が手弁当で始めるときは、できれば分け隔てなく、来たい人がいれば、どなたでも歓迎です。みんなで食べたら楽しいという感じです。公園のような場所です。公園は、年齢も問わない、属性も問わない、収入も問わない、一人で行ってもいいし、グループで行ってもいい、という場所です。屋内でやっている時もやっている人達は、公園のような場所を作りたいと思っています。そういった場所が広がっている。今、全国で子ども食堂は、7000という数になっています。全国に小学校は19000あります。中学校は、その半分で10000弱です。小学校と中学校は、毎年統廃合されて減り続けています。子ども食堂は、毎年1000箇所づつ増えています。ということは、あと2・3年で中学校より子ども食堂が多きなります。児童館というサービスがありますけれども、これは全国に4400ですから、既に超えています。子ども食堂の利用者も1000万人以上となっています。
今までの話をまとめると、子ども食堂とは、子どもを真ん中に置いた多世代交流の地域の居場所となります。子ども食堂は、食べられない子どもが行く場所と思っていて人がいますが、それは違います。こういう活動はどこで広がっていくのか?多世代交流の場所ということで、都会にもニーズはありますが特に地方に強いニーズがあります。子ども食堂の数が全国の都道府県で一番多いのは、東京で800箇所あります。しかし、人口比では、16位です。人口比で1番多いのは、沖縄県です。2位が鳥取県、3位高知県、4位滋賀県、5位山口県、6位大分県、7位長野県、8位熊本県となっており、大都市圏より地方で広がっています。なぜなら地方の方が人口が減り寂しくなっているからです。都会には広がっていないのかというとそうではなく、都会は都会で広がっています。それはなぜかというと、都会には人はいるけれど縁が薄い。隣の人を知らない。というようなことがあります。また、子どもたちの遊び場が昔に比べて無くなってきています。都会では、そういった時代背景があり、人との繋がりがあった方がいいということで始める人が出てきています。
日本政府は子どもの貧困率を13.5%と発表しています。貧困というと飢えて明日にも死にそうという人のことを思い浮かべるが、実際はそうでない人も含まれるし、むしろ、そうでない人の方がが多いのです。私は、そういうのを黄信号と赤信号を呼んでいます。赤信号というのは、とっても厳しい状態で、今日食べるものがない。所持金50円という状態の人をいいます。こういう人は、確かに居ますが、とても7人に1人にはならない。黄信号を含めるので13.5%になってしまうのです。黄信号の子は、例えば修学旅行に行けない子です。修学旅行に行けなくても死にはしないし、退学する必要もなく、進学もできる。しかし、修学旅行へ行けないというのは、2泊3日とか3泊4日を一緒に体験できないというだけでなくて、事前学習に入れないし、帰ってきてからの思い出話にまで加われない。ということで影響は結構長く続き、「ぼっち」が生まれるのです。そういう子は、何かの拍子にいじめのターゲットとなってします。また、何かの拍子に事件になってしまいます。それが赤信号です。そういうふうに“黄信号”と“赤信号”はつながっているのです。
こうした人達は、自分から相談にはいきません。学校に相談室を作っても子供は相談室に行きません。「そういうところは自分より大変な人が行く」と思っています。そこへ行くと、「自分ではどうにもならない。」ということを自分で認めることになると思っています。実は大人もそうなんです。むしろ大人がそうなんです。大人がそうなんで、子どももそうなっているんです。そういう感じなので、赤信号の人は、行政の窓口に行く人もいます。確かに行政で対応する必要があるので、それでいいのですが、黄信号の人は、行政の窓口には行きません。でも厄介なのは、放っておくとこの人達が赤信号になってしまうことなんです。「どなたでもどうぞ。」と言っていると相談窓口に来てくれない黄信号の人達が来てくれるんです。そうするといろいろな接点がもてて、対策が打て、支援ができるようになるんです。こうした場が貧困対策に繋がっているんです。子ども食堂の運営者の人達は、そうしたことに問題意識を持っている人が多いので、そういうことに気づけて、自分にできることをしたいと思うようになってくるんです。
私たちが大事にするのは、いろいろな人との繋がりです。繋がりというのは、必ず双方向なので、こういった活動は自分に返ってくるんです。従って、こういった活動は、特別な人がやる、特別な人のための活動から、より身近な活動となって、自分でもかかわれると思っていただければと思い、今日の話を終わります。
質疑応答
Q1:公民館を借りて、活動を行っていますが、他の団体と調理場を取り合ってしまう場合があります。今後、どのように進めていけばいいでしょうか?
A1:可能なら別の場所も確保できたらいいですね。お寺とか。お寺で行っている子ども食堂も多くなっています。また、保育園で行っている子ども食堂あります。諦めずに声をかけ続けてください。そうしますと何処かで誰かが聞いていてくれて、声がかかるかもしれません。
Q2:場所の確保がネックになっています。どのように考えればよいでしょうか?
A2:東京都の住宅局が始めた取り組みを紹介します。都営住宅の集会室があまり使われていない場合があります。しかし、自治会等が管理していて一般の人は借りずらい。そこで、東京都の住宅局が仲介して、都営住宅の自治会と話を付けてくれるサービスを開始しました。「東京みんなでサロン」というサービスです。こういった動きが広がってきているので、日野市の都営住宅お集会室とか自治会のコミュニティーセンター集会室とかの可能性は高まってきているのではないでしょうか。いろいろあたってみてください。
Q3:コロナ渦の衛生面の確保や食中毒のリスク対策、課題などありましたら教えてください。
A3:厚生労働省が2018年に通知を出してくれています。一口で言いますと子ども食堂は、一般家庭と飲食店の間 です。飲食店水準を求めると殆どの子ども食堂は無理なので、そこまでは求めない。しかし、家族以外のひとも食べるので、家庭で作るよりは気を付けて、ということを意識してください。
Q4:黄色信号の人達へのアプローチの仕方について教えてください。
A4:直接、根掘り葉掘り話を聞くのは、よくない。運営者が、一緒にいる中で何か気づいた時に誰に相談すればいいかを分かっている状態をつくることが大事です。例えば地域の保健士さんや社会福祉士の方、社協の方などの専門職の方とコミュニケーションをとって、いつでも相談できるようにしておく。気づいた時に相談できる人がいると気づきやくなります。気づきやくする環境をつくることが大事です。
<アンケート結果> 参加者70名中、回答数38名
Q1 「本日のシンポジウム開催を何で知りましたか?」
A1 「広報・ポスター・ちらし」が31%、「ホームページ」23.1% でした。
Q2「総合的にどのくらい満足されましたか?」
A2 「満足」69.2%、「ある程度満足」30.8%
Q3 「子供食堂について関心が高まりましたか?」
A3 「高まった」76.9%、「ある程度高まった」23.1%
<寄せられたご感想>
・運営お疲れ様です。参考になる情報など拝聴させていただき、ありがとうございました。今後の活動の参考にさせていただきます。
フードバンクTAMAさんの細やかな活動実践が聞けてよかったです
・対象者を限定するのではなく、公園のように誰でも来て良い場所にすることで、決壊的に赤信号の人たちも集まるということがとても
面s白いと思った。
・子ども食堂は子どもだけではなくその地域で暮らす人みんなが集まれる場所だと学びました。
・「こども食堂」への認識がかわりました。誰でも集える公園であり、その中に存在しているであろう黄色信号赤信号の人々に気づく
きっかけの場であるとのこと。視野を広く、視点を色々持って日々の活動を行うことの大切さを改めて感じました。
・子ども食堂の背景や実態がわかりました。子ども対象と思っていましたが分け隔てなくみんなが集まれる場所であること。つながりの
大切さを感じました。