世界と日本の動き

2019年10月に日本で食品ロス削減推進法が施行されました。国連が食料問題を考える日として1981年10月16日を世界食料デーを制定してから実に38年も経っていました。日本で食料に対する危機意識が浸透するのにそれほどの時間がかかったということを意味するのではないでしょうか。
一方、2020年のノーベル平和賞に世界各地で食料支援を行う国連機関「世界食糧計画」が選ばれました。世界がコロナ禍に見舞われる中、飢餓撲滅に向けた努力が評価されたようです。最貧国等では飢餓問題として、先進国では貧富の差による貧困問題として、食料対策を講じる必要性がクローズアップされています。
世界では全人口の9人に1人に当たる8億人が飢えに苦しみながら、肥満は6億人という地球規模ですさまじいアンバランスが生じています。そうした中、日本では、食品ロスは522万トン(令和2年度推計値)に上がり、日本人1人当たり毎日茶碗1杯分のご飯を捨てている計算になります。

相対的貧困と子ども

子どもの相対的貧困率(世帯所得の中央値の50%を下回る世帯の子どもの割合)は、2018年時点で13.5%となっています。つまり子ども7人に1人が貧困ということです。2015年時点で13.9%となっています。この結果、家庭では満足な食事ができない子どもが数多く存在し、夏休みが終わって登校すると、体重が減少している子どもがいるという状況も生じています。さらに満足に食事が摂とれない人は、子どもだけに限らず収入が低い高齢者や働けない人たちにも及んでいます。豊かな日本の陰で、日々の食事にも事欠く貧困に苦しむ人たちは思いのほかいるということです。

食品ロスの現状

日本で出回っている食料は、2013年度の推計で約8,300万トンといわれていて、そのうち約2,800万トンが廃棄されています。さらに廃棄されている約2,800万トンうち、約522万トン(18.6%)は食べることが可能とされています。これは、世界の食糧支援量(2020年で年間420万トン)の1.2倍に相当します。食糧自給率が38%と低く輸入に依存している日本にとって、食品ロスを減らすことは重要な問題です。
なお、今般のコロナ禍の影響で食品ロスが改善されとのアンケート結果がハウス食品グループから発表されました。それによると、食品ロスが「全くない」との回答率が前年に比べ10%も増えたといいます。食品ロスの改善の定着がのぞまれます。
食品ロスの発生には、食品関連会社では規格外商品や製品の汚損・破損、スーパー等の小売業では賞味期限切れや売れ残り、各家庭では食べ残しや不要となった等の理由によります。また、食品流通業界には、賞味期限が6ヶ月の場合、メーカーまたは卸売業者は製造日から2ヶ月以内までに納品、製造日から3分の2までの賞味期限から2カ月前までが販売期間となり、それを過ぎると返品や廃棄や撤去となります。新型コロナウィルスの影響により、こうした流通面においても当初は業務用の出荷先を失い大量の農産物をはじめ食品を廃棄したといいます。また、加工食品も売れ行きが芳しくなくなったため、生産調整に入りました。

フードバンクでの変化

こうした時代状況によりフードバンクも、以下のように少なからず変化しました。
食品関連企業が、SDGs(持続可能な開発目標)・SCR(企業の社会的責任)を踏まえフードバンクへの食品寄贈を増やすようになりました。当フードバンクTAMAも沢山の企業からの食品を寄贈いただくことができるようになりました。
② 新型コロナウィルスの影響で失職・減収にみまわれた貧困家庭対策として、国や自治体、また、様々な団体が助成金や補助金制度を設けていただいたことにより各フードバンクも補助金収入を増加することができ、それを原資として食品を購入し、児童福祉施設や子ども食堂、個々の貧困家庭への食品提供を図ることができました。

 

 

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