フードバンクTAMA第3回シンポジウムを開催しました!

これまでにない155名の方にご参加いただきました。”有意義なシンポジウム”とのご評価をいただきました。著名な法政大学の湯浅教授の基調講演や日本で初めて子ども食堂を開いた大田区の近藤博子氏(気まぐれ八百屋だんだん子ども食堂代表)の現場での体験談、また、日野市セーフティネットセンター青木センター長の市の取り組みなど、様々な角度からのお話に共感の声が上がりました。参加された皆さまにとっても実り多い会合になったとの声が寄せられております。アンケートを取らさせていただきましたが、賛同する声が多数をしめました。なお、今回のシンポジウムにおきましても、日野市社会福祉協議会の宮崎様はじめスタッフの皆さまの支援によるところが大きく、感謝申し上げます。

<内容>

司会挨拶 早川洋子(フードバンクTAMA理事)
■挨拶
・芝田事務局長(フードバンクTAMA事務局長)
・奥住日出男氏(日野市社会福祉協議会会長)
■基調講演
・湯浅誠氏(法政大学教授)
■報告
① 近藤博子氏(気まぐれ八百屋だんだん子ども食堂代表)
② 青木真一郎氏(日野市セーフティネットコールセンター長)
■質疑応答
・閉会の辞:神山治之(フードバンクTAMA理事長)

<挨拶・講演・報告の要旨>

① 芝田晴一朗(フードバンクTAMA事務局長)の挨拶

本日は、フードバンクTAMAの第3回シンポジウムへのご出席を賜り誠に有難うございました、また、受付でのフードドライブへの食材のご提供、心よりお礼申し上げます。配布資料は100部しか用意して御座いませんでした、申し訳ありませんでした。お近くの方の資料を一緒にご覧頂ければと思います。フードバンクTAMAは、食品ロスの削減に取り組むと共に、食品を必要としている貧困者、高齢者、子供及び災害にあわれた方々や施設等に食品を提供する事業を進めて参りましたが、本年より、子供の学習支援や、子供への食提供事業も開始しました。フードバンクTAMAが支援を致しました一人親家庭の親御さんからのお礼の言葉を頂いておりますので、そのいくつかをご紹介致します(3件ほど紹介)。まだまだ多くの方が支援を必要とされていますので、皆様のご協力を頂きまして、支えあいの絆やコミュニティを広げていくこと、今後ともご支援をお願い致します。

② 挨拶:奥住日出男氏(日野市社会福祉協議会会長)

様々なメディアを通じて、子供の貧困が大きな社会問題となっていることをご存知かと思います。国や地方自治体が対策を打っているのですが、一番の問題は、子供の貧困が見えにくいということです。日野市社会福祉協議会は、フードバンクTAMAと協定を結び、活動を展開しておりますが、子供の貧困は食だけではなく、(貧困が理由のいじめ等の)心の貧困も問題となってきています。本日のシンポジウムが皆様にとって、子供の貧困対策への関心を深め、更なるご支援活動へのお役に立つことを期待しております。


③ 基調講演:湯浅 誠氏(法政大学教授)の講演 [パワーポイント資料]

本日も、ここに来る前に、品川で子供食堂の立ち上げ支援活動をしておりました。我々にはお金は無いのですが、子供食堂の立ち上げノウハウの支援を行うことが出来ます(立ち上げ支援のお金は、区や福祉支援センターが提供できる)。子供の貧困には、個人だけではなく、企業や地域が関りを持つようになってきていると思います。
元日本代表監督で日本サッカー協会の岡田武史副会長がオーナーを務めるFC今治では2018年方針として、今治での子供食堂の開設を実現するということを聞いております。サッカー好きの子供達にも教えているなかで、一人親家庭ではサッカー遠征費用が払えなくて、参加出来ないことに気付くことから始まり、貧困家庭の現実を見て、岡田さんが居ても立ってもいられず行動を起こすことにしたのでしょう。サッカーに限らず、野球クラブやその他、多くの大人が、貧困がゆえに参加出来なくなった子供の存在を知っています。昔と違って、子供の服装や持ち物では貧困か否かは判断できません。日々一緒に過ごす大人のみが貧困に陥っている子供に気付くことが出来るのではないかと思います。
「子供の貧困とは何か?」と言えば、①お金がない、②繋がりが無い、③自信がない、の3つがあると思います。高齢者の例で話をした方が分かりやすいかもしれません。例えば、日々の生活費に追われ、香典など出す余裕も無く、知人や親戚の葬式にも参加出来ない方は、地域や親戚のお付き合いから抜けてしまう。夫や妻が認知症になっても相談できる人がいない。ゴミ出しの方法も次第に分からなくなり、ゴミ屋敷となって初めて、近所の住人も、地方の行政も知ることになります。まさに、黄信号状態で支援が出来れば比較的容易に助けられたものが、赤信号状態になってから気付き、問題は大きくなっていってしまうわけです。
貧困のために「子供が修学旅行に行けない」という状況でも、何故行けないのか、何が問題なのか把握できない大人もいます。修学旅行に行く仲間の輪に入れない子供は「ボッチ」になり、「修学旅行なんてくだらない」と憎まれ口をたたくかもしれません。怒る大人も出てくるでしょう。その子供が赤信号の状態にならない限り、誰も深刻な問題とは思わない。黄信号の子供も含めれば、子供の7人に一人の貧困がいるのです。
「我々は何が出来るか?」を考えたいと思います。黄信号が赤信号になる前に、手を打たなければなりません。貧困の3つの要素のうち、①お金があって、②繋がりがあるようにすることが出来れば解決になります。残念ながら、お金は我々にも無いため、ここは行政に頼ることになるでしょう、しかし、繋がりの方は我々民間が対応出来るところです。繋がりを作るとは居場所を作るということですが、それでは居場所とは何か?居場所とは、自分らしく居られる場所、衣食住が有り、様々な体験が出来る場所で、時間をかけて、自分の話や困りごとを相談できる場所です。残念ながら、全ての家庭が全ての子供に対して「居場所」にはなっていません。
家庭で鍋を家族でつつくということが無かった女子高生が、実際に大勢で鍋をつつく初めての経験をした際に、「本当にこんなことがあるんだ」と驚いたという話があります。自分の家庭を相対化できるようになる、気付く、貧困の連鎖が断ち切れるのは、このような時です。その貧困を100%肩代わりするのではなく、一緒に出来ることがあれば、それを一緒に体験するということが貧困対策となるのです。20年後30年後に、自分とは違った生活や体験を、自分の子供にさせることが、貧困の連鎖を断ち切るために大事なことです。我々は、何か特別なことをする必要は無いのです。鍋を一緒に食べるということだけでも良いのです、普通の方でもやれることは多いし、そんなことから一歩を踏みだせるのではないかと思います。働いている姿を子供に見せることだけでも良いのです、人生の選択肢が増える、価値観が変わることがその子に良い影響を与えるかもしれない、何がその子のスイッチを入れるか分からないのです。
ついでに言うと、ボランティアは中途半端で終わっても良いのです、出来なくなったら止めれば良いのです。子供と一緒に何かをやっていると、その子に対しての気づきが早くなることにも繋がります。赤信号の子供は救うことか難しいかもしれませんが、黄信号の子供に気づけば、それ以上の悪化を防止できます。皆さんも、もう少し優しいお節介な地域で暮らしたいのではありませんか?黄信号の子供を落ち込ませないような地域と致しましょう。。

④ 報告:近藤博子氏(気まぐれ八百屋だんだん子ども食堂代表)の報告  [PDF]

子供食堂が日本で凡そ2300箇所にも広がっているということを聞き、感無量です。身の丈で出来ることをすれば良いとの、湯浅さんの話を聞いて自信が出ました。私は元々は歯科衛生士でした。子供の塾代を稼ぐために、週末の野菜の配達を行う仕事を行うことになり、配達のみならず、近所の高齢者の方々へ販売も行うようになり、それが縁で地域の高齢者の暮らしぶりを知ることとなりました。身の上話、子育ての悩み、いろいろ個人で聞いても、行政にその声が届くまでには遠い道のりがあることも知りました。
子供の塾もひょんなことから開始しました。知り合いに頼んで、自分の子供とその友達に教えてもらうことから始め、その後も、子供からお願いされて、続けてきました。配布資料の「だんだん6月の予定」にもあるように、どんどん活動が広がって行きました。
こども食堂(皆で一緒にたべよう)の始まりには、少し悲しい思い出もあります。食堂に良く来ていた子供が、どうしても親と一緒に暮らせずに、子供養護施設に行ってしまったことと、それに対して何も出来なかったことが今でも悔しいことです。
2012年から食堂を開始しましたが、どの子を呼べば良いのか分からず、子供の状況を児童館の館長に尋ねたら、子供応援隊に入るように言われて、手伝うことになりました。近所には、外国人の子供も増え、親と暮らせない子供もいます。こども食堂の活動を理解して貰うために、いろいろな場に出るようになりました。八百屋は10年目、こども食堂は6年目に入りました。食堂は、大人も子供も集まれる場所になっていき、黄信号の子供を救う、自分で出来ないことは相談できる場所になって行きました。子供の貧困を救うということは、時間がかかることですが、皆様も、自分でやれることからスタートしたら良いのではないでしょうか。。

⑤ 青木真一郎氏(日野市セーフティネットコールセンター長)の報告 [パワーポイント]

日野市セーフティネットコールセンターは日野市の一つの課であり、生活保護を受けている方、受けようとしている方や、生活困窮者の支援を行っています。また、シングルマザーへの支援や、引きこもり対策についても実施しております。平成29年度には、日野市では、「日野市子どもの貧困対策に関する基本方針」を発表しております(配布資料参照)。目指すべき姿として、「全ての子供達が、夢と希望を持って、成長して行けるような地域を目指す」を謳って活動を続けているところです。(以降、スライドに沿って説明あり:日野市では、生活保護世帯は1%、就学援助は10%、相対的貧困率は13.4%等の、日野市の貧困家庭状況についてのデータ紹介あり。また、東京都が実施した「子供の生活実態調査」結果の日野市の情報は、今後の子供の貧困への支援活動の基本的なデータとして有効。時間が押していたため、後半部分は割愛。)基本方針に沿って、今後とも、行政側からの対策等を進めて参りますので、ご協力・ご支援のほど、宜しくお願い致します。

■ 閉会の辞:神山治之(フードバンクTAMA理事長)

本日は、お忙しい中、多数ご参加いただき、有難うございました。
また、本日のシンポジウムで、貴重なご講演を賜りました、湯浅様、近藤様、青木様、大変有難うございました。
本日のフードライブでも多数の食材をお預け頂きましたことお礼申し上げます。
参加されました皆様方とご講演者のお三方へのお礼を持ちまして、本日の閉会の言葉とさせて頂きます、どうも有難うございました。。

<質疑応答>

Q:(湯浅さんへ)私は、無料塾を立ち上げて、黄信号の子供の支えとしているが、課題として、情報が本来必要としている子供に届いているか、手を差し伸べられているか(アウトリーチ)が課題となっている。具体的な情報があれば教えて欲しい。
A: (湯浅)いくつかの例があるが、例えば、埼玉県の白鳥さんの例では、家庭訪問して、その場で、教えてしまうという方法をとっている、これで4割の対応を行い、残りの4割は学習支援教室で対応、来れない生徒への支援も必要であろう。佐賀の谷口さんの例も参考となる。
Q:(3名の講演者のそれぞれへ)貧困に陥るのは、働いても十分な賃金を貰えないためだと思うが、どうか?
A:(近藤)一人親の場合は、一人で2つや3つの仕事をこなしている方もいる。確かに、賃金が少ないのは事実であろう。特に障害者は賃金が少なく、生活保護を抜けたい方がいても、そこから抜けることが困難な方も多い。
A:(湯浅)厚労省の最低賃金保証とも絡むが、先進国のなかでも、働いているのに貧困な方が日本では多い。また、近年では、男性が非正規職に就くことが多く、賃金が下がってしまっている。同一業務、同一賃金の動きもあり、改善されつつあるかと思うが、例えば住居費の抑えるとかの支出を下げる自衛策も求められているかも。
A:(青木)貧困を脱却するには、正規就労が望まれるが、その職に就く準備が出来ていない方もおり、そのような方々を個別に支援することも対応している。

<アンケート結果>

Q1 「本日のシンポジウム開催を何で知りましたか?」
A1 「ポスター・ちらし」が30%、「家族や知人から」が45% でした。
Q2 「総合的にどのくらい満足されましたか?」
A2 「満足」74%、「やや満足」17%、「どちらともいえない」9%
Q3 「子どもの貧困問題について関心が高まりましたか?」
A4 「高まった」78%、「やや高まった」15%、「どちらともいえない」7%
Q5 「子ども食堂について関心が高まりましたか?」
A5 「高まった」59%、「やや高まった」30%、「どちらともいえない」11%

<寄せられたご感想>

△ 湯浅教授の話はすばらしかった。福祉関連の継続的な講義を期待します。例えば、高齢者の貧困、障害者の貧困、ひとり親の貧困、若者の貧困、etc(八王子市在住 82歳 男性)
△ このようなシンポジウムに参加するのは初めてだったのですが、とても為になるお話を聞くことができました。私自身も大学内で子ども食堂やその他貧困支援のボランティア等を微力ながらも行っているため、参考にさせていただきたいなと感じました。やはり湯浅先生のお話しがとても面白く、興味深かったです。(鶴ヶ島市在住 19歳学生 女性)
△ 湯浅先生の話は心にすっと入ってきて、とても響きました。沢山のヒントをいただきましたので、これから何か動いていけそうです。(八王子市在住 46歳会社員 男性)
△ 湯浅さんのお話、大変分かり易く聴きました。金銭的貧困という状況でなくとも、子どもにとって、家庭が世界の大部分であり、価値観の形成場であり、生涯において与える影響は決して少なくないこと、その相対化が遅れるほど抜け出すのも難しいような気がします。日常に幾つも気づきのチャンスは転がっているはすですが、開かれた視点や心を持っていないと負の連鎖を断ち切れず、など自分事のように聴きました。(日野市在住 31歳飲食系 女性)
△ 基調講演興味深く拝聴いたしました。豊かな体験による価値観の変化や考え方の広がりが、貧困の連鎖を断ち切る力となりうること、まさにその通りだと思います。(日野市在住 55歳公務員 女性)
△ 貧困のケースとして、高齢者のケースが身につまされる話でした。「お金」「人とのつながり」「自信」。他者に優しい社会、何かできること、身近なシングルマザーの方のことを思い出した。連鎖を断ち切るのは平凡な関わり、日常生活の大切さ、食卓を囲む会話の大切さに気付いた。普通のことが後々幸せにつながる変わり目になるのは、長い時間と関わりが必要で、すぐには結果は出ないし、その時間を共に過ごすことが大切だと思った。(八王子市在住 55歳 女性)
△ 行動をするに際して、「気負いすぎない」「特別な能力なんていらない」という湯浅氏の言葉に気楽になった。そして、今の気力を今後の活動のために今日から活かしていきます。ありがとうございました。(八王子市在住 20歳学生 男性)
△ 参加者の多いことに驚きましたが、それだけ関心の高いことなのだと実感しました。子ども食堂の運営に関わっていますが、今日のシンポジウムでのことを参考に、また活動のお手伝いをしていきたいと思います。ありがとうございました。(八王子市在住 58歳 女性)
△ 今回初めて参加させていただきましたが、とても良い学びになりました。人と人とのつながりの大切さ、地域や学校での活動の中でまだまだ見えてこない沢山の課題があると思いました。身近でできることを無理なく続けていきたいと思います。ありがとうございました。(八王子市在住 60歳 女性)

■ 各ご家庭から食品をお持ちくださり、大変ありがとうございました。
市内の児童養護施設等にフードバンクTAMAのスタッフが責任をもって届けさせていただきます。

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